【言語障害×伝え方】講演で伝えてきた“多様な表現方法”と社会に必要な3つの視点
言いたいことがあるのに声が出ない、話すペースが合わない、聞き返されるたびに心が縮む――。言語障害がある人に限らず、誰もが「うまく伝わらない」経験を抱えています。
では、どうすれば自分の思いをもっと自由に表現できるのか。
この記事では、私、東谷瞳の講演活動を通して見えてきた“多様な伝え方”を紹介しながら、声以外の手段を活かすコツや、周囲ができる環境づくりをわかりやすくまとめました。補助機器の使い方から、理解を深める場のつくり方、社会が持つべき視点まで網羅。読むことで、日常のコミュニケーションがもっとラクに、もっと広がるはずです。
聴覚や発声だけに頼らない 新しい表現の形
言語障害がある人にとって、声だけでやり取りすることは大きな負担になることがあります。そこで注目されているのが、声以外のコミュニケーション手段。方法が増えるほど、「伝わらない不安」が軽くなり、選択肢も広がる流れが生まれます。
補助機器や文字盤など代替手段の紹介
話しにくい場面では、補助機器や文字盤など、声以外で意思を伝える手段が大きな助けになります。タブレットの音声変換アプリは、短い文を入力するだけで自動的に読み上げてくれる便利な方法。文字盤なら、指さしで言いたい言葉を示すだけで相手に内容が届くメリットもあります。
特に学校や公共の場では、こうしたツールがあるだけで会話のハードルが一気に下がる感覚。あらかじめ準備しておくと、自分のペースで伝えられる安心につながります。ツールは特別なものではなく、身近にある“もうひとつの声”。自由度が広がり、コミュニケーションの負担が軽くなる効果が期待できます。
手書き/メモ/アプリなど「書く・表示する」コミュニケーションの活用
声を出すのが難しいとき、もっとも手軽なのが「書く・表示する」コミュニケーション。紙とペン、スマホのメモアプリ、タブレットのフリーメモなど、身の回りにあるものをすぐ使える点が強みです。
たとえば、外出先で急に言葉が出にくくなったときも、メモに「ゆっくり会話したい」と一言書くだけで状況が伝わる流れ。アプリを使えば、短文を表示したり、事前に定型文を保存しておけるので、慌てずに意思表示ができる安心感も生まれます。
「書く」という動作は、自分のペースを守るための大切な選択肢。相手も内容を読み取れるため、誤解を防ぎやすい利点があり、伝え方の幅をなめらかに広げてくれます。
身振り・視線・簡単な板書など言葉以外の手段も選択肢
声も文字も使いにくい場面では、身振りや視線など、非言語のコミュニケーションが頼りになることもあります。たとえば、指さしで選ぶ、うなずきで同意を示す、眉を上げて「疑問」を伝えるなど、シンプルな動作でも十分に意思が伝わるケースが多いもの。
学校では、ホワイトボードに簡単な絵やキーワードを書くことで、言葉を補うやり取りが可能。職場や公共の場でも、見てわかるヒントがあるだけで、会話の流れがスムーズに動き出す感覚があります。
大切なのは「声が出ない=伝えられない」ではないという考え方。身振り・視線・板書は、誰もが自然に使えるコミュニケーションのひとつ。言語障害のある人だけでなく、緊張して話しにくい人や、外国語に不安がある人にも役立つ汎用的な手段です。
声・文字・動作。この3つを組み合わせることで、自分にとって最も伝えやすい方法をその場で選べるようになるのが大きな安心。新しい表現方法は、日常の不安をやわらげ、コミュニケーションの自由度を大きく広げる鍵になります。
講演活動で見えた 表現方法拡張のリアルな効果
講演活動を続ける中で気づいたのは、伝え方は一つだけでは足りないということ。言葉が届く相手もいれば、届きにくい相手もいる。だからこそ、声・動作・道具・空気づくりなど、いろいろな表現方法を組み合わせることで、初めて“伝わる場”が生まれます。ここでは、そのリアルな効果を具体的にお伝えします。
複数の伝え方を組み合わせることで理解が深まる場のつくり方
講演では、言葉だけで説明すると難しく感じる内容もあります。そこで、私はスライド、身ぶり、たとえ話などを同時に使うように工夫しました。例えば、数字の話なら図で示す。気持ちの話なら、表情や声の強弱で空気をつくる。これらを同時に使うことで、聞き手の理解度が大きく変わります。
特に中学生くらいの年代には、「見える情報」があると安心につながるもの。言葉で説明→図で補足→動作でイメージづけ、という流れにすると、頭の中でつながりが生まれ、内容がすっと入っていく様子を感じました。これは、ただ話すだけでは得られない効果。複数の伝え方があるからこそ、誰もが取り残されない空間がつくれるのだと実感しました。
聴衆や支援者を巻き込んだ“伝わる仕組み”の構築
講演は話し手だけが頑張る場ではありません。聞いている人、サポートしてくれるスタッフ、会場の雰囲気も含めて、一緒につくり上げるもの。私が意識するのは“巻き込み”。
例えば、質問タイムをあえて早めに設けたり、会場の人に一言コメントをお願いしたりします。こうして参加者が声を出すと、会場の空気が動きはじめる。話し手と聴衆との距離が縮まり、「自分ごと」として聞いてもらえる流れになります。
また、スタッフには事前に“合図”をお願いすることもあります。聞き取りにくい部分があったとき、スライドが見づらいとき、ちょっとした表情で知らせてもらう仕組みです。これだけで講演全体の質が上がり、伝え漏れが減るのを強く感じています。伝わる仕組みづくりは、話し手一人では完成しない。みんなでつくるからこそ、安心して伝えられる場になるのです。
私の体験から得た「伝え方の幅が広がった実感」
講演活動を重ねるたび、「あ、前より伝わっている」という手応えが増えていきました。それは、表現方法の幅を広げたから。初めの頃は、声だけでなんとかしようとして力んでしまうことも多く、うまく伝わらず落ち込む日もありました。
けれど、言葉以外の手段を積極的に取り入れたことで、相手の反応が明らかに変わりました。頷きが増える。質問が深くなる。講演後に「今日の話、すごく入ってきたよ」と声をかけられる。そんな瞬間が増えるたびに、「伝え方の選択肢を持つことは、自分を助ける力にもなる」と気づきました。
表現方法の拡張は、ただ相手のためだけではありません。話し手である自分自身が楽になる、心が軽くなる、新しい手応えをつかめるーーそんな大きな効果を私にもたらしてくれたのです。
誰にとってもやさしい 社会づくりに必要な視点
「伝わらない」「聞き取りにくい」「どう言えばいいのか分からない」。そんな悩みは、言語障害のある人だけでなく、誰にでも起こりうるもの。だからこそ、社会全体として“コミュニケーションの多様性”を理解し、だれもが安心して関われる環境を整える必要があります。ここからは、やさしい社会をつくるために欠かせない視点を具体的に解説します。
合理的配慮としてのコミュニケーションの多様性に対する理解
やさしい社会をつくる第一歩は、「人によってコミュニケーションの得意・不得意が違う」という当たり前を受け入れること。声で話すのが得意な人もいれば、文字を書くほうが伝えやすい人、ゆっくり話さないと不安になる人など、表現の方法は本当にさまざまです。
合理的配慮とは、そうした違いを“特別扱い”と考えるのではなく、「誰もが使える選択肢をそろえる」ための工夫。例えば、会議で文字表示を併用する、質問をチャットで受け付ける、ゆっくり話しても大丈夫な空気をつくるといった配慮があるだけで、安心して話せる人はぐっと増えます。
これは特別な支援ではなく、“理解のスタートライン”。多様な伝え方を認める社会は、結果としてみんなに優しい場所へと近づきます。
学校・職場・公共機関で取り入れたい支援のしかた
次に必要なのは、この理解を「日常の仕組み」として取り入れること。学校なら、授業中に板書と音声説明の両方を用意するだけで、多くの生徒が内容をつかみやすくなります。発言が苦手な人には、ノート提出やタブレット入力で意見を出す方法も有効。
職場であれば、会議資料を事前に共有しておく、議論のポイントをまとめたメモを出すなど、情報の流れを整理した支援が役立ちます。公共機関では、筆談ボード、音声案内、手話対応、チャット窓口など、複数の選択肢があると利用者が安心して相談できます。
これらの支援は「手間がかかる」と思われがちですが、実際には“やり方を一度整えれば誰でも使える仕組み”になります。結果として、不安が減り、相談しやすい環境ができ、トラブルも少なくなるという好循環が生まれます。
言語障害のある人だけでなく、すべての人にとって使いやすい配慮
最後に伝えたいのは、「使いやすい配慮は、特定の人だけのものではない」ということ。配慮は“弱さのための支援”ではなく、“誰もが心地よく過ごすための工夫”です。
例えば、音だけでなく文字でも案内されると、聞き逃しても安心できます。ゆっくりした説明は、内容を理解しやすい。選択肢が複数ある講演会や窓口は、初めて利用する人にも親切。これらはすべて、言語障害の有無に関係なく役立ち、ストレスの少ない社会につながる取り組みです。
私自身も、表現の選択肢が増えたことで「伝えられない不安」が減り、人と関わるハードルが下がりました。これは誰にとっても同じ。多様なコミュニケーション手段がそろっている社会は、誰もが“自分らしく表現できる場所”となります。
0コメント