障がいと妊娠:不安と感謝に包まれた日々
妊娠は喜びに満ちた出来事である一方、障がいを持つ女性にとっては体調の変化や医療対応への不安が重なり、戸惑うことも少なくありません。「障がいがあるけど妊娠・出産できるの?」「体調が悪化したらどう乗り越える?」そんな疑問を抱く方も多いでしょう。
この記事では、私自身の体験をもとに、妊娠中に直面した困難や医療との向き合い方、そして周囲からの支えによって感じた感謝や学びをまとめました。これから妊娠・出産を考える障がい当事者やその家族にとって、安心やヒントにつながる情報をお届けします。
はじめに ─ 私の妊娠を語る意味
妊娠は多くの人にとって喜びと期待にあふれた時間です。しかし障がいを抱えていると、その道のりは少し違う景色に見えることがあります。ここでは、私が妊娠を経験して感じた思いをお伝えします。
このテーマを選んだ理由
私が「障がいと妊娠」というテーマを書こうと決めたのは、同じ立場の人に少しでも役立つ情報を届けたいと考えたからです。妊娠が分かったときの喜びは、健常者と変わりません。けれど、体調が思うように整わなかったり、医療の現場で不安を抱えたりすることが少なくないのも事実です。
たとえば、つわりが重なって入院を繰り返すと、「本当に赤ちゃんを産めるのだろうか」と自信を失いそうになりました。言葉でうまく説明できない障がいの症状に、医療スタッフが戸惑う場面もありました。そんなとき、支えてくれる家族や主治医の存在が、どれほど心強かったか計り知れません。
多くの妊婦さんが持つ不安に加えて、障がいがあると「自分にしかない壁」にも向き合うことになります。そうした体験を記録しておくことで、これから妊娠を考える人が少しでも安心できるのではないか。そう思い、筆をとりました。
妊娠中の出来事は十人十色です。ですが「同じ障がいがあっても違う道を歩める」という例を一つでも増やせたら、それが誰かの希望になるはずだと信じています。
「障がい×妊娠」が伝えたいこと
私が語りたいのは、「障がいがあっても妊娠・出産は可能であり、そこには多くの発見がある」ということです。もちろん、簡単な道ではありません。入院や体調不良、医療とのすれ違いに直面し、時には涙も流しました。それでも、周りの支えに感謝しながら過ごした日々は、確かな学びを残してくれました。
妊娠を通じて知ったのは、「頼ることは弱さではない」という事実です。授乳やお風呂など赤ちゃんのお世話を一人で担うことは難しくても、家族と一緒に関わることで子育ては成り立ちます。妊娠期からすでに「支え合い」の土台は始まっていたのだと、今になって気づきました。
また、医療の現場で感じた課題も大切に記録したいと思います。障がい特性を理解してもらうことの難しさ、説明が伝わらないもどかしさ、そして専門外の医師が新たな視点をくれる驚き。これらの体験は、妊娠という一大イベントを超えて、社会に必要な視点を示しているのではないでしょうか。
「障がい 妊娠」という言葉は、不安やリスクと結びつけられがちです。しかし実際には、そこにしかない感謝や学びがありました。困難と喜びは表裏一体。だからこそ、誰かが経験を語ることで次につながる道がひらけます。
妊娠発覚から出産までの軌跡
妊娠は誰にとっても大きな出来事ですが、障がいを抱える場合には予想以上の試練や学びが待っていました。ここでは、妊娠発覚から出産までの道のりをたどります。
妊娠発覚と不安の始まり
最初はただ体が重く、息苦しい日々が続いていました。夏の暑さのせいかと思っていたのに、病院で妊娠が分かったときは驚きと喜びが入り混じりました。一度流産を経験していたため、嬉しさと同時に「また同じことにならないか」という不安が押し寄せました。障がいを持つ妊婦にとって、妊娠の喜びとリスクは常に隣り合わせなのだと痛感しました。
つわり・体調変化の記録
妊娠初期から体調は大きく揺れ動きました。特に「つわり」は日常生活を一変させ、障がいによる体力の弱さと重なり、想像以上に過酷なものでした。
吐きつわり・食べつわりなど複合症状
食べても吐く、食べないと気持ち悪い。まさに両極端の症状に振り回されました。さらに唾液が多く出る症状まで加わり、夜はほとんど眠れない日々。水分が取れず脱水になりかけ、点滴でようやく落ち着いたこともありました。
筋緊張・震戦(「震える症状」)の出現
つわりのつらさに加え、体の筋肉が勝手に緊張して震える「震戦」という症状も現れました。障がい特有の症状が妊娠で強く出てしまい、立っているのも難しい時期がありました。医師からも「これは珍しいケース」と言われ、先が見えない不安がさらに大きくなったのを覚えています。
入退院・安静生活とのせめぎ合い
体調が安定しないため、入院と退院を繰り返しました。点滴で楽になる瞬間もあれば、再び吐き気や震えに襲われ、病院と家を行き来する日々。障がい 妊娠ならではの「長期の安静」が続くと、体力も気力も奪われます。それでも「赤ちゃんのため」と言い聞かせ、横になりながら時間を過ごしました。
お腹の張り・羊水の減少と切迫リスク
妊娠中期にはお腹の張りが強まり、羊水が少ないと指摘されました。車椅子妊婦は腹圧がかかりやすく、切迫早産のリスクも高いと説明を受けました。張り止めの薬も副作用が重く、息苦しさや震えが増すため続けられず、ただ安静にするしか方法はありませんでした。この「治療が限られる現実」は大きな壁でした。
出産直前〜緊急手術に至った経緯
妊娠後期には血圧が急に上がり、医師から「もう待てない」と判断されました。予定より早い帝王切開の準備が進む中、全身麻酔になるかもしれないと告げられ、娘の誕生をその場で抱けないかもしれない恐怖に包まれました。それでも幸い局所麻酔が成功し、産声を聞いた瞬間に赤ちゃんを胸に抱けました。長い入退院と葛藤の先にあった喜びは、言葉にならないものでした。
妊娠期に感じた “障がいゆえの不便 / リスク”
妊娠そのものは喜びに満ちていますが、障がいを抱えていると独特の不便やリスクがついて回ります。ここでは、私が体験した具体的な壁や不安を整理してみます。
障がい特性が妊娠に与える影響
障がいを持つ身体は、妊娠による変化に敏感に反応しました。お腹が大きくなるにつれ、車椅子での移動が難しくなり、腹圧による張りも早い時期から感じました。筋緊張が強まると全身が震え、息苦しさで動けなくなる日もありました。一般的な妊婦さんの悩みに加え、「障がい 妊娠」特有の体調不良が重なることで、日常生活のハードルは一段と高くなったのです。
医療者とのコミュニケーションでの課題
もう一つ大きな壁となったのは、言葉で症状を伝える難しさでした。私は言語障がいもあるため、妊娠中の細かな体調変化を説明するのに時間がかかります。病院によっては理解が追いつかず、不要な薬を処方されかけたこともありました。障がい 妊娠では「伝えたいことが伝わらない」不安が常につきまとい、医療者との信頼関係づくりに多くの労力を要しました。
既存の前例が少ないことによる心配
医師からも「こうしたケースは少ない」と言われる場面が度々ありました。障がいを持つ妊婦は統計的にも少なく、ガイドラインが十分に整っていないのが現実です。治療やケアの選択肢が「前例がないから難しい」と片づけられてしまうと、妊婦本人は「自分と赤ちゃんを守れるのか」と強い不安に襲われます。私自身、点滴や麻酔をめぐって医師と何度も話し合いを重ねることになりました。
合理的配慮や医療体制の壁
障がいのある人が安心して妊娠・出産に臨むには、合理的配慮や医療体制の整備が欠かせません。しかし現場では「専門外だから対応が難しい」と言われることもあり、実際に制度があっても十分に活用できない場合があります。妊娠中は体調が不安定で、自分から強く要望を出すことも困難です。だからこそ、妊娠前から相談窓口や支援機関とつながっておく必要性を強く感じました。
支え・関係性・感謝
妊娠中、障がいを抱えながら過ごす毎日は決して一人では乗り越えられませんでした。家族や医療者、制度や地域の人たちの支えがあったからこそ、赤ちゃんを迎える準備を続けられたのです。
家族・パートナーのサポート
最も大きな支えになったのは家族と夫でした。つわりで動けないときには食事を用意してくれたり、夜中に体調が急変したときもすぐに病院へ付き添ってくれたりしました。自分では抱っこやお世話が難しいときも、代わりに赤ちゃんをあやしてくれる姿に安心を覚えました。「自分ひとりで母親にならなくてもいい」と気づけたのは、家族の協力があったからです。
医療者・看護師・助産師との出会い
妊娠中は入退院を繰り返したため、多くの医療者と関わりました。医師は妊娠のリスクを丁寧に説明してくれ、看護師や助産師は不安な心に寄り添ってくれました。時に症状をうまく伝えられず戸惑わせることもありましたが、何度もやり取りする中で「伝えたい気持ちを受け止めてくれる人がいる」という安心感を得られました。医療現場での出会いは、命を守るだけでなく心の支えにもなったのです。
支援制度・相談窓口の活用
妊娠を続けるうえで、制度や相談窓口も大きな助けになりました。市町村の保健師に相談すると、入院中の生活支援や退院後のリハビリについて情報をもらえました。また、福祉サービスを利用して家事を手伝ってもらうことで、体力を温存できたのも大きかったです。妊娠中は体調が急に変わるため、自分一人で抱え込まず早めに相談することが大切だと実感しました。
周囲からの励まし・見守り
友人や知人からの励ましも忘れられません。入院中に届いたメールやお見舞いの言葉は、孤独感を和らげてくれました。「あなたなら大丈夫」と背中を押してもらうたびに、弱った心が少しずつ前を向けるようになったのです。地域の人たちの温かい見守りもあり、妊娠中の不安をひとりで抱える必要はありませんでした。
妊娠を通して得た発見・自分との対話
妊娠は、体調の変化だけでなく心の変化も大きくもたらします。障がいを持つ私にとって、その時間は自分自身と向き合い、新しい発見を得るかけがえのない機会となりました。
障がい者視点で気づいた身体感覚
妊娠中、障がいがあることで体の反応は敏感になりやすく、ちょっとした変化にも強く影響を受けました。お腹の張りや息苦しさは健常者でも起こりますが、私の場合は筋緊張や震えが重なり、症状がより強く表れたのです。体調が安定しない日が続くと「今日はこれができる」「明日は難しい」と細かく自分の身体を観察する習慣がつきました。
価値観・生き方への揺さぶり
妊娠を経験すると、それまで当たり前だと思っていた価値観が揺さぶられました。「母親はこうあるべき」というイメージと現実の自分との差に悩んだ時期もあります。しかし、できないことを数えるのではなく、できることを見つける姿勢に切り替えた瞬間から、心はずっと楽になりました。
障がいを持ちながら妊娠・出産に挑むことは、自分の限界を知ることでもありましたが、その中で「頼ること」「助けを受けること」を肯定できるようになったのです。これは私の生き方全体を見直す大きなきっかけになりました。
命を育む意味を改めて知る
妊娠を通して最も強く学んだのは「命を育む意味」でした。つわりや入退院で苦しい日々もありましたが、お腹の中で小さな命が成長していくことは何よりの希望でした。検診で心拍を確認したときや、エコーで動く姿を見たときの感動は今も鮮明に覚えています。
不安は多かったものの、赤ちゃんが無事に育っているという事実が「生きる力」を与えてくれました。命は自分の思い通りにコントロールできるものではなく、ただ全力で守り、見守るしかない。そのことに気づいた瞬間、出産への不安よりも「この命を信じたい」という気持ちが強くなったのです。
障がいを抱えて妊娠した時間は、困難の連続でした。それでも、身体を丁寧に感じ取る力や、価値観を見直す視点、命そのものへの感謝を得ることができました。私にとって妊娠は、赤ちゃんを迎える準備であると同時に、自分自身を深く知る旅でもあったのです。
これから妊娠・出産を考える障がい者の方へ
妊娠や出産は喜びと同時に、多くの不安も伴います。特に障がいを抱えている場合、体調や生活の不便さに加え、医療体制や支援の少なさが心配になるものです。ここでは、実体験から得たヒントをまとめました。
情報収集・相談先リスト
妊娠を考えたとき、まず大切なのは「情報を集めること」です。インターネットで「障がい 妊娠」と検索すれば体験談は見つかりますが、正確な医療情報は病院や自治体の窓口で確認した方が安心です。
たとえば、保健センターには妊婦相談を受け付ける保健師がおり、障がいの有無にかかわらず利用できます。また、福祉課や障がい者支援センターも心強い味方です。早い段階から相談先をリスト化しておけば、体調が急に悪化したときにも慌てずに対応できます。
準備しておきたいこと(体調管理、医療体制把握など)
障がい 妊娠を安心して進めるためには、体調管理が欠かせません。日々の体調を記録して医師に伝えるだけで、診察はスムーズになります。また、入院や出産を予定している病院が障がいに配慮できるかを事前に確認することも重要です。
私は「車椅子妊婦」の体験談を読んで腹圧の影響を知り、早めに主治医へ相談しました。結果として、お腹の張りに対応できる準備が整い、大きな安心につながりました。どんな障がいであっても、リスクを把握し、医療者と共有しておくことが未来の安全につながります。
心の準備・葛藤との向き合い方
妊娠・出産には体調の変化だけでなく、心の葛藤もついてきます。「自分に育児ができるのか」「周囲に迷惑をかけないか」と悩むのは自然なことです。私も何度も同じ思いにとらわれました。
しかし、妊娠中に学んだのは「一人で完璧にやろうとしなくていい」ということです。家族や支援者に助けを求めることは、弱さではなく命を守る大切な選択でした。気持ちを言葉にし、信頼できる人に打ち明けるだけでも心は軽くなります。
まとめ
障がいを抱えながらの妊娠・出産は、体調不良や医療体制の壁、不安とのせめぎ合いの連続でした。それでも、家族や医療者の支えを得て、自分の身体と向き合い、命の尊さを実感する時間でもあったのです。
大切なのは「一人で背負わないこと」。情報や制度を活用し、周囲に頼ることで、妊娠は希望に変わっていきます。どんな状況でも新しい命を迎える喜びは変わりません。これから挑戦する方々にも、安心と笑顔で歩んでほしいと願っています。
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