車椅子バスケとツインバスケの違いは?ルール改正も含めて徹底比較

車椅子を使った競技といえば「車椅子バスケットボール」を思い浮かべる方が多いですが、実はもう一つ「車椅子ツインバスケットボール」という種目があるのをご存じでしょうか?


両者は似ているようで、ゴールの数やルール、使用するボールなどに大きな違いがあります。


さらに最近では、車椅子ツインバスケットボールも「24秒ルール」を採用し、よりスピーディーでエキサイティングな試合展開が楽しめるようになりました。


本記事では、両競技の基本ルールや違いをわかりやすく整理し、最新ルール変更のポイントまで解説します。読み終える頃には、それぞれの競技の魅力と観戦の楽しみ方が一層クリアになるでしょう。


車椅子バスケットボールとは?

車椅子バスケットボールは、見た目は通常のバスケに近いですが、車椅子ならではの特別なルールや工夫があります。その魅力を知るために、まず基本ルールを見ていきましょう。


競技の基本ルール

車椅子バスケットボールは、その名の通り「車椅子に乗って行うバスケットボール」です。コートの大きさやゴールの高さは、一般的なバスケットボールとほとんど同じです。1チームは5人で構成され、試合時間も10分×4クォーターで行われます。ボールを使った攻防、ドリブルやパス、シュートといった基本的なプレーも共通しています。


大きな違いは「トラベリング」のルールです。通常のバスケットではボールを持って3歩以上歩くと反則になりますが、車椅子バスケでは「車椅子を2回こいだら、必ずドリブルする」ことがルールになっています。これにより、車椅子を使いながらもバスケットボールらしいリズムが生まれます。


使用される車椅子の特徴

試合で使うのは、普段の生活用車椅子ではなく「スポーツ用の車椅子」です。バスケットボール用に特別に作られており、素早く動けるように設計されています。タイヤは少し斜めに取り付けられていて、急な方向転換やスピードを出す時でも安定します。また、前後には転倒を防ぐための小さな補助輪が付いていて、激しいプレーでも安全にプレイできます。


選手によっては、自分の体に合わせたオーダーメイドの車椅子を使うこともあります。軽量化されていて、体の一部の動きが制限されていても操作しやすいよう工夫されています。これにより、さまざまな障害を持つ選手がそれぞれの持ち味を活かしてプレイできるのです。


攻守のポイント

車椅子バスケットボールは、スピードと戦術がとても重要なスポーツです。攻撃では、車椅子を素早く操作して相手の守りを崩し、パスをつないでシュートを狙います。ゴール下では身体の接触も多く、車椅子同士がぶつかり合う迫力あるシーンもよく見られます。


守備では、相手の進路をふさぐ「チェアワーク」が大切です。自分の車椅子をどう動かすかで、相手のシュートを防いだり、パスをカットしたりすることができます。選手同士の声かけやチームワークも欠かせません。


また、国際大会では選手に「持ち点」があり、障害の程度によって1.0~4.5点が割り振られます。コート上の5人の合計が14点以内というルールがあるため、監督は戦略的に選手を組み合わせる必要があります。これが、他のスポーツにはない車椅子バスケ特有の面白さになっています。


車椅子ツインバスケットボールとは?

車椅子ツインバスケットボールは、車椅子バスケットボールをより多くの人が楽しめるよう工夫されたスポーツです。その成り立ちを知ると、競技の魅力がさらに深まります。


誕生の背景と目的

車椅子ツインバスケットボール(通称:ツインバスケ)は、日本で生まれたユニークなスポーツです。1970年代、重度の障害を持つ人でもスポーツに参加できるように考案されました。


従来の車椅子バスケットボールは、ある程度上半身を自由に動かせる選手でなければ難しい部分がありました。そのため「もっと多くの人が活躍できる競技を」という思いから、ツインバスケが作られたのです。


この競技は、障害の程度に関係なく参加できることを目指しています。上肢に障害があっても、軽いボールや低いゴールを使うことで、誰もが得点に関われるようになっています。ツインバスケの誕生には、「スポーツのバリアをなくし、全員が主役になれる場所をつくる」という強い目的が込められているのです。


基本ルールと特徴

車椅子ツインバスケットボールは、1チーム5人でプレイする点は通常のバスケットと同じです。試合時間も10分×4クォーターで行われます。ただし大きな特徴は「コートに2つの高さのゴールがある」ことです。通常の高さ(305cm)のゴールに加えて、低い高さ(120cm前後)のゴールも設置されています。


選手は障害の程度によってどちらのゴールを狙うかを選べるため、誰もが得点のチャンスを持てます。また、ボールも通常より軽量化されており、握力が弱い選手でも扱いやすいよう工夫されています。ドリブルやパス、シュートといった基本プレーは車椅子バスケと共通していますが、より幅広い選手が参加できるよう配慮されたルールになっています。


また、車椅子バスケットボール同様、選手に「持ち点」があり、障害の程度によって0.5~4.5点が割り振られます。コート上の5人の合計が11.5点以内というルールがあります。


さらに、最近では国際的なルールに合わせる形で、ショットクロック(攻撃制限時間)も「24秒」に短縮されました。これにより試合展開が速くなり、観客にとっても見応えのある競技になっています。


車椅子バスケとの大きな違い(ゴール2つ・ボールの軽量化など)

ツインバスケと車椅子バスケットボールの一番大きな違いは、ゴールの数です。車椅子バスケットボールが通常の高さのゴール1つなのに対し、ツインバスケは「高いゴール」と「低いゴール」の2つを使います。障害の程度に応じて狙うゴールを選べるため、誰もが活躍の場を持てるのです。


もうひとつの特徴は「ボールの軽量化」です。車椅子バスケットボールは重さがあり、握力や腕の力が弱い選手には扱いが難しい場合があります。そこでツインバスケでは、軽くて持ちやすいボールが使われ、より多くの人が参加できる工夫がされています。


また、戦術面でも違いがあります。2つのゴールをどう攻めるかでチーム戦略が大きく変わり、相手ディフェンスを揺さぶる多彩な攻防が見られます。これがツインバスケならではの魅力であり、観戦する人にとっても新鮮で面白いポイントです。


最新ルール変更「24秒ルール」の採用

ルール変更の大きなポイントは「攻撃に使える時間」が短縮されたことです。ここでは、30秒から24秒へと変わった背景と意味を見ていきましょう。


以前の30秒ルールからの変化

車椅子バスケットボールや車椅子ツインバスケットボールでは、攻撃に使える時間を制限する「ショットクロック」というルールがあります。


以前は「30秒ルール」で、攻撃側のチームはボールを持ってから30秒以内にシュートを打たなければなりませんでした。しかし、近年このルールが見直され、バスケットボールと同じ「24秒ルール」が採用されました。


これにより、攻撃時間が6秒短くなったのです。一見すると小さな変化に思えますが、実際には試合の流れや戦い方に大きな影響を与えています。


試合のテンポや戦略に与える影響

24秒ルールが導入されたことで、試合全体のスピードがぐっと速くなりました。攻撃に使える時間が短いため、選手たちは素早く判断し、次の動きを決めなければなりません。ゆっくりとパスを回して攻撃を組み立てるよりも、早い段階でシュートチャンスを作ることが重要になります。


そのため、守備側も素早く対応しなければ得点を許してしまいます。こうした攻守の切り替えの速さが試合をさらにエキサイティングにし、観客にとっても目が離せない展開が増えました。スピード感や迫力が増したことで、初心者が観戦しても楽しめるようになった点も大きな魅力です。


選手・チームへの適応ポイント

新しいルールに対応するために、選手やチームは練習方法を工夫しています。たとえば、攻撃パターンをシンプルにして短い時間で得点につなげる方法を研究したり、すぐに守備に戻れるような動きを意識したりしています。


また、体力や集中力もより大切になりました。短い時間で攻撃を仕上げるためには、瞬時の判断力とスピードある動きが不可欠だからです。チーム全体としても、テンポの速い試合に慣れるためのトレーニングが欠かせません。


両競技の違いを整理

両競技を比べると、基本ルールは似ていますが、プレイ環境には工夫された違いがあります。まずはコートやゴールの違いを見てみましょう。


コート・ゴールの違い

車椅子バスケットボールと車椅子ツインバスケットボールは、どちらもバスケットボールをベースにしていますが、コートやゴールの使い方に大きな違いがあります。


車椅子バスケットボールは通常のバスケットボールと同じコート(28m×15m)で、ゴールは両端に1つずつ、合計2つです。高さは3.05メートルで、下肢に障害がある選手が力強くシュートを打ちます。


一方、車椅子ツインバスケットボールは「ツイン」という名前の通り、両端に上下2つのゴールがあります。上ゴールは通常の3.05メートル、下ゴールは1.20メートルに設定されており、上ゴールを狙える選手と下ゴールを使う選手に分かれます。この仕組みによって、腕の力や可動域が異なる選手でも得点チャンスを持つことができます。


ボールの違い

ボールの性質にも違いがあります。車椅子バスケットボールでは、一般のバスケットボールと同じくレザー製や合成皮革のボールを使用します。重さや弾み方は通常のバスケットボールとほぼ同じで、ドリブルやパスの感覚も一般のバスケに近いです。


一方、車椅子ツインバスケットボールでは、上肢に障害がある選手でも扱いやすいように、ゴム製で軽めのボールが使われます。軽くて握りやすいため、腕の力が弱くてもスムーズにドリブルやパス、シュートが可能です。この違いは初心者でもプレイしやすい環境づくりの工夫といえます。


試合時間・ショットクロックの違い(最新版)

どちらの競技も試合は4クォーター制で、1クォーター10分、合計40分です。延長戦は5分のオーバータイムとなります。


違いが出るのは「ショットクロック(攻撃時間)」です。以前はツインバスケでは30秒ルールでしたが、現在は車椅子バスケットボールと同じく24秒ルールが採用されました。


この変更により、どちらの競技もテンポが速くなり、攻守の切り替えが重要になっています。選手は短時間で判断し、素早くシュートやパスを決める必要があります。チーム戦略も、よりスピーディで効率的な動きが求められるようになりました。


戦術・プレイスタイルの違い

戦術やプレイスタイルも両者で異なります。車椅子バスケットボールは5人全員が同じゴールを狙うため、速攻やセットプレー、パスワークを駆使してゴールを狙います。ガード・フォワード・センターといったポジションごとの役割も明確で、スピード感と戦術の深さが特徴です。


車椅子ツインバスケットボールは、上ゴールと下ゴールを狙う選手が同時に存在するため、攻撃パターンが多彩です。下ゴールの円内シューター・円外シューターはそれぞれの位置から得点を狙い、上ゴールの選手と連携して戦略を組み立てます。これにより、力の差に関わらず全員が試合に参加できる点が大きな魅力です。


どちらの競技も持つ魅力

両競技の魅力を語るうえで欠かせないのが、コート全体を駆け巡るスピード感と、体同士や車椅子がぶつかり合う迫力です。


スピード感と迫力

車椅子バスケットボールと車椅子ツインバスケットボールは、どちらも車椅子に乗りながら行うスポーツです。選手たちは手の力で車椅子をこぎ、コートを縦横無尽に動き回ります。そのスピード感は観ているだけでもワクワクする迫力があります。


特に車椅子バスケットボールでは、5人全員が同じゴールを狙うため、パスやドリブルの連携がスピーディで、攻守の切り替えも速くなります。観客席からは、選手が車椅子を巧みに操る動きや、華麗なシュートの瞬間を間近で感じることができます。


車椅子ツインバスケットボールでは、上下2つのゴールを狙う選手が同時にコート上にいるため、戦略の幅が広がり、攻撃パターンも多彩です。円内シューターや円外シューターといった役割分担により、短い距離での精密なシュートや、長距離からの狙い撃ちなど、多彩なプレイを楽しめます。これにより、スピード感と迫力に加え、戦術の面白さも体験できます。


多様な選手が活躍できる環境

どちらの競技も、障害の程度や年齢に関係なく参加できる工夫があります。車椅子バスケットボールは、障害の程度に応じた「持ち点制度」を採用しており、チーム全体の合計点数が決まった範囲に収まるように編成します。これにより、重度障害者でもチームに貢献できる環境が整っています。


車椅子ツインバスケットボールは、上肢に障害がある選手も参加しやすいように、低いゴールや軽量のゴム製ボールを使用しています。また、上ゴールと下ゴールに分かれてプレイするため、力の差に関わらず誰もが得点チャンスを持てます。円内シューターや円外シューターといった役割分担があることで、初心者や体力に自信がない選手でも安心して試合に参加できます。


このように、両競技は「多様な選手が活躍できる環境」を重視しているのが大きな魅力です。


観戦・体験の楽しみ方

観戦の楽しさも両競技の魅力です。車椅子バスケットボールでは、速いパス回しや華麗なドリブル、激しいリバウンド争いなど、迫力あるプレイを間近で観られます。車椅子ツインバスケットボールでは、上下のゴールを使った攻防や、選手同士の連携プレイを観ることで、戦術の面白さを感じられます。試合の結果だけでなく、選手がどうやって役割をこなしているかを見るのも楽しみ方のひとつです。


また、体験会に参加すると、自分自身で車椅子を操作してシュートを打つ楽しさを体感できます。ボールの軽さやゴールの高さが工夫されているため、初心者でも得点を狙いやすく、プレイの達成感を味わえます。友達や家族と一緒に体験することで、スポーツとしての面白さだけでなく、協力して遊ぶ楽しさも学べます。


よくある質問(FAQ)

車椅子ツインバスケットボールと通常の車椅子バスケ、どちらが初心者向け?

初心者が始めやすいのは、車椅子ツインバスケットボールです。ツインバスケは、上ゴールと下ゴールに分かれているため、腕の力が弱い人でも得点を狙いやすく、役割が明確です。円内シューターや円外シューターといったポジションがあることで、自分に合ったプレイに集中できます。


一方、通常の車椅子バスケットボールはゴールが高く、スピード感も強いため、最初は慣れるまで少し難しく感じることがあります。ただし、スポーツとしての迫力や技術向上を楽しみたい人にはおすすめです。


健常者でも参加できる?

車椅子バスケットボールもツインバスケットボールも、健常者がサポート役や体験参加として楽しむことはできます。特に体験会やイベントでは、健常者でも車椅子に乗ってプレイすることが可能です。


ただし、公式大会では障害のある選手が対象となる場合が多く、ルールや競技者資格を確認する必要があります。健常者は指導者や補助として参加することで、競技を支える楽しみ方もあります。


車椅子の操作は難しいですか?

最初は少し慣れが必要ですが、車椅子はバスケットボール専用に設計されているため、安定性と操作性が高く、コツをつかめばスムーズに動かせます。


初心者向けの体験会では、車椅子のこぎ方や方向転換の練習から始めるので安心です。繰り返し練習することで、ドリブルやパス、シュートに集中できるようになります。


年齢制限はありますか?

両競技とも、年齢制限は特に厳しくありません。小学生から大人まで幅広く参加できます。年齢や体力に合わせて役割を変えられるため、初心者や高齢者でもチームに入りやすいです。特にツインバスケットボールは、腕の力に差がある選手でも活躍できる工夫がされているため、年齢に関係なく楽しめます。


車椅子バスケットボールはどのくらい体力が必要ですか?

スピード感のあるスポーツなので、ある程度の体力は必要です。長く試合に出る場合は腕の力と持久力が求められます。しかし、チームで交代しながらプレイできるため、自分の体力に合わせて楽しめます。ツインバスケットボールでは、下ゴールを狙う選手の負担が少ないため、体力に自信がなくても参加しやすいです。


まとめ

この記事では、車椅子バスケットボールと車椅子ツインバスケットボールの特徴や違い、そして最新ルールの「24秒ルール」について詳しく解説しました。


車椅子バスケットボールはスピード感と戦術の深さが魅力で、選手の障害の程度に応じた戦略が試合をより面白くしています。


一方、車椅子ツインバスケットボールは、上下2つのゴールや軽量ボールの工夫により、初心者や腕の力が弱い選手でも得点チャンスがある点が大きな特徴です。最新の24秒ルールの導入により、両競技とも試合テンポが速くなり、観戦や体験の楽しさもさらに増しています。


また、どちらの競技も多様な選手が活躍できる環境が整っており、体験会や練習会に参加すれば、初心者でも安全に車椅子バスケットボールを楽しめます。健常者も補助や体験プレイとして参加可能で、家族や友達と一緒に挑戦することで、スポーツとしての魅力を実感できます。


車椅子バスケットボールと車椅子ツインバスケットボールを知り、実際に体験することで、スピード感や迫力、戦術の面白さをより身近に感じられます。初心者でも楽しめる工夫が随所にあるので、ぜひ一度体験会や観戦で、その魅力を体感してみましょう。どちらの競技も、多くの人が笑顔でプレイできる素晴らしいスポーツです。


リンク 一般社団法人 日本車いすツインバスケットボール連盟|JWTBF

脳性麻痺ライター・著者 東谷瞳  |障害と生きる日々

これまでの活動を振り返って、一度まとめてみようと立ち上げたのがこのサイトです。ずいぶん昔の物から最近の想いまでお伝え出来れば幸いです。

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