20.一人のための工夫が、みんなを変える
その工夫は、たった一人のために始まった。
聞こえにくい子がいるから、先生がゆっくり話すようになった。
車椅子の人が来るから、通りにくかった場所が整えられた。
少し時間がかかる人がいるから、待つことが当たり前になった。
きっかけは、とても小さい。
特別なことでも、大きな変化でもない。
でも、その変化は、気づかないうちに広がっていく。
最初は「その人のため」だったものが、
いつの間にか「みんなのため」になっている。
Flowerで何度も感じてきたのは、この変化の連なりだった。
誰か一人が声を上げる。
誰か一人がそこにいる。
それだけで、周りの見え方が変わり、関わり方が変わっていく。
環境が少しずつ変わり、空気が少しずつ変わっていく。
それは決して、一気に起こるものではない。
時間がかかるし、うまくいかないこともある。
それでも、確実に積み重なっていく。
これまでのコラムの中で、いろいろな話をしてきた。
外に出ることの難しさ。
手助けの迷い。
「違い」に対する戸惑い。
そして、人と人との関係のあり方。
そのどれもが、簡単に答えの出るものではなかった。
でも、ひとつだけ、確かに言えることがある。
それは、「関わることでしか、何も始まらない」ということ。
知らなければ、変わらない。
出会わなければ、気づかない。
関わらなければ、何も動かない。
そして、その関わりは、特別なものじゃなくていい。
ほんの少し声をかけること。
同じ時間を過ごすこと。
相手のことを考えてみること。
その小さな一つひとつが、少しずつ世界を変えていく。
あるメンバーが言っていた。
「違いがあってよかった」
その言葉には、これまでのすべてが詰まっているように感じた。
もし、みんなが同じだったら、気づけなかったこと。
出会えなかった人。
生まれなかった関係。
違いがあるからこそ、人は立ち止まり、考え、関わろうとする。
その中で、新しいつながりが生まれていく。
一人のための工夫は、やがて誰かのためになり、
気づけば、みんなの当たり前になっていく。
それは、とても静かで、でも確かな変化だ。
大きなことをしなくてもいい。
完璧でなくてもいい。
まずは、一人のために、できることを考えてみる。
その一歩が、誰かの世界を変え、
そして自分の世界も、少しずつ変えていくのかもしれない。
違いは、壁ではない。
それは、出会いを引き寄せる“種”になる。
そう信じられる社会を、
少しずつでも、つくっていけたらと思う。
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